目次ほたる 「記憶のはしっこ」#3
7 Photosモデル・ライターとして活動する19歳、目次ほたるが写真を通して、忘れたくない日々の小さな記憶をつなぐ連載「記憶のはしっこ」の3回目です。
目次ほたる 「記憶のはしっこ」#3
7 Photosモデル・ライターとして活動する19歳、目次ほたるが写真を通して、忘れたくない日々の小さな記憶をつなぐ連載「記憶のはしっこ」の3回目です。
自分にとっての「ふつう」が、誰かにとっての「ふつう」ではなくて。
誰かにとっての「ふつう」が、自分にとっての「ふつう」ではなかったりする。
私の「ふつう」と、あなたの「ふつう」で、補い合えたらいい。
幼い頃、よく布団の中に小さなライトを持ち込んで、妹とテントごっこをしていた。
部屋の電気を消して、掛け布団に潜り込み、真ん中を棒や段ボールを立てて支えると、なんとなくテントっぽくなるのだ。そこでお菓子を食べたり、本を読んだりするのがとても楽しかった。(お陰で目が悪くなったけど)
今考えてみると、あれはテントでもなんでもなかったけれど、間違いなく、世界で一番の居場所だった。
生きることが辛くなったとき、よく現実逃避の妄想をする。私の定番の妄想は、「全部ドッキリ」と思うことだ。例えば、仕事に疲れた時、「あぁ……もうダメだ」となったら、宙を見上げて想像するのは、今いる部屋のドアがガバッと開いて、そこからニヤニヤとした表情を浮かべた人たちが入ってくるところ。彼らの手には”ドッキリ大成功”と書いた看板が持たれている。そして、あれよあれよと言ううちに、とっても豪華な部屋に連れて行かれて、私は本当は大金持ちの御令嬢として生まれたことを伝えられるのだ。めでたしめでたし。
つまり、私はどこかの大富豪のお嬢様なので、働く必要もないし、苦労する必要もない。
そう考えるだけで、心がちょっと軽くなって、目の前のことに一生懸命になれるのだ。オホホホ。
大通販サイトAmazonで、本の物色をするのが趣味だ。
私のこの趣味は、もう中学生くらいのときから続いている。
書店で見かけた本を調べたり、SNSでだれかがオススメしていた小説なんかを、「欲しい物リスト」に入れる。すると、欲しい物リストから私の好みの傾向を、システムが推測して、また新しい本を紹介してくれたりする。まるで、読みたい本を自動的に教えてくれる近未来の図書館みたい。
だから、私にとっての欲しい物リストは、いわばインターネットに乗っかった自分専用の書庫なのだ。買ったって、どうせすぐに読みはしないのだから、心のそこから読みたくなったとき、お金を払って取り出せばいい。すると数日で家に届き、新鮮な気持ちで読むことができる。なんて素晴らしい時代なんだろう。(もちろん、本屋さんも大好きです)
夜、ベッドに横になって、「朝起きたら、1000年に1度の美少女に生まれ変わっていますように」と祈ってから眠りにつく。けれど、目が冷めれば、いつもと変わらない私の顔が、鏡のなかで仏頂面をしている。致し方ない。
撮影・文 目次ほたる