目次ほたる 「記憶のはしっこ」#18
7 Photosモデル・ライターとして活動する20歳、目次ほたるが写真を通して、忘れたくない日々の小さな記憶をつなぐ連載「記憶のはしっこ」の18回目です。
目次ほたる 「記憶のはしっこ」#18
7 Photosモデル・ライターとして活動する20歳、目次ほたるが写真を通して、忘れたくない日々の小さな記憶をつなぐ連載「記憶のはしっこ」の18回目です。
昔から、最悪の事態ばかりを想像して、1人で勝手に恐れおののくクセがある。
外出中に階段をおりるときは、毎度「後ろから誰かに突き落とされるのではないか」と不安で、手すりを持っていないと怖くて降りられないし、夜は「強盗が入ってくるかもしれないから」と小さくとも電気をつけていないと寝られない。
ちょうどこの写真を撮っているときも、「なんらかの拍子にこの海に落ちて、荷物がびしょ濡れになってしまうかもしれない。そうしたら、カメラが壊れてしまうし、いや、なにより泳ぎが苦手なんだから溺れてしまったらどうしよう」と考えていた。
まさしく杞憂である。
それで、このまえ自分の心配性ついて、知人に話してみることにした。
「心配性というか、怖がりというか。困ってるんですよね」
私がそう言うと、知人はにっこりと笑って、「想像力が豊かなんですね」と返してきたのだ。
想像力が豊か。素晴らしい言葉だ。
その言葉さえあれば、私はビビリでも、心配性なわけでも、どうでもいいことを考えているわけでもなく、世界の無限の可能性に豊かな想像力を発揮していたことになる。
私は知人に感謝しながら、(何事もこんなにポジティブに変換できたらどんなにいいだろう。いや、私にはできないだろうな)と、また憂鬱になっていた。
最近、恋愛小説を読むのにハマっていて、特に「私の幸せな結婚」という小説が、爆発的にヒットしている(主に私のなかで)。
もとはネット小説から始まった作品で、私も小説投稿サイトから見つけ出して読んでいたのだけど、それが書籍化したと聞いて、すぐに書店に向かった。
お目当ての本はすぐに購入できて、ホクホクとした気持ちで家に帰ったが、その日は読む時間がなかったので、机の上にそのまま置いておいた。
すると、次の日、母が私の机に置いてある小説を見つけて、
「もしかして結婚に悩んでいるのかと思って、心配になったよ」とため息をつかれたのだ。
まさか小説の題名だけで、母を心配させることになるとは思わなかった。
母よ、私はまだ結婚には悩んでいないし、悩む予定もないから安心してほしい。
ある知人がこの連載を見て、「若かったころの感覚が蘇るみたいだよ。だれもが知っていて、だれもが忘れてしまう感覚を見せてもらった気がする」と言ってくれた。
生きてる限り、私たちはその場その場で「役割」が与えられると思っている。
人によっては、それを「やりがい」とか「使命」などと言い換えるのかもしれないけれど、私にとっての役割が少しわかった気がした。
家族と一緒に山のほうまで、おいしいおそばを食べに行ったはいいものの、途中で大喧嘩したせいで、おそばの味をイマイチ覚えていない。写真は喧嘩するまえに、なんとか撮った紅葉。
ため息をつきながら遠くを見つめてみたり、物寂しさにふと夜空を見上げてみたり、休憩時間に散歩に出かけてみたり。
そういう「生活の余白のなかで生まれる写真」に安心する。
実は先日、この河川敷でポートレート写真を撮ってきた。
次回は人物たっぷりでお届けします。
撮影・文 目次ほたる