目次ほたる 「記憶のはしっこ」#25
7 Photosモデル・ライターとして活動する20歳、目次ほたるが写真を通して、忘れたくない日々の小さな記憶をつなぐ連載「記憶のはしっこ」の25回目です。
目次ほたる 「記憶のはしっこ」#25
7 Photosモデル・ライターとして活動する20歳、目次ほたるが写真を通して、忘れたくない日々の小さな記憶をつなぐ連載「記憶のはしっこ」の25回目です。
(撮影・Canon EOS Kiss M2 )
1月が、もう終わりを迎えようとしている。
体感的には、一昨日くらいまでお正月を楽しんでいたはずなのに、いつのまにか今年最初の月が終わろうとしているのだから、時の流れは本当に恐ろしい。
2月は逃げる、3月は去る、なんて言うけれど、もしかしたら私の20代も逃げていって、30代も去っていくように終わり、40代も……なんて考えて、一気にナイーブな気持ちになってしまった。それもこれも連日続く寒さのせいだ。そうに決まっている。
寒さに生物は勝てないので、温かいココアかなにかを飲んで、春まで冬眠できたらいいのに。
(撮影・Canon IXY DIGITAL 910 IS)
この道路標識を見るたびに、私に兄がいたら良いのにと想像する。
私は女姉妹に生まれたからか、男兄弟というものにたまに憧れを感じていた。
実際に兄がいる友人にそのことを話した時は、「兄なんてとんでもない。私はお姉ちゃんが欲しかった」と言われるから、結局はないものねだりなのかもしれないけれど。
(撮影・Canon EOS Kiss M2 )
この前、横浜へ街を撮りに行ったとき、飼い主さんが愛犬を撮影するところを見かけた。
飼い主さんが愛犬をキレイに撮ろうと必死に指示を出しているのに対して、愛犬側も懸命に要望に答えようというのが遠くからでも見て取れて、なんだか可笑しかった。
犬はあんなに言うことを聞いてくれるのかと思い出しながら、この原稿を書いている傍らで、うちの愛猫は、私のキーボードを叩く手を追いかけて、見事に邪魔をしにきてくれている。
(撮影・Canon IXY DIGITAL 910 IS)
高校生のとき、3ヶ月ほどコンビニバイトをしていたときがあった。
学校から帰ってきたあとの、17時から22時までの5時間勤務。
だいたい17時ごろは暇で、18時くらいからちらほらとお客さんが入ってきて、21時くらいに急に忙しくなった。
というのも、21時くらいに近くの工事現場が休憩時間になるらしく、工事をしていた人たちが夜食を買いに一気に舞い込んでくるのだ。
ある冬の寒い日、いつもと同じように休憩時間に来た人が、私に飲み物をごちそうしてくれたことがあった。私がレジを打って会計した後に、先程レジ袋に入れたばかりの温かいお茶をひょいと渡されたから、最初はなにか不手際があったのかと焦ったのだけれど、仕草からどうやら私にくれるらしいとわかった。
「いいんですか?」と聞くと、「君も頑張ってるでしょ?」とニカリと笑うものだから、ありがたく頂戴した。
結局、立ち仕事は腰が痛いという理由で(身長が高いからか、昔から腰痛持ちなのだ)、バイトはやめてしまったのだけれど、この時期にコンビニに行くとあの日のお茶のことを思い出す。
(撮影・Kodak M35)
近所のスーパーにたまに「宮ねぎ」という、ちょっと変わったねぎが売られていることがある。通常のネギよりも太めで、そのまま食べると青臭くて辛いけれど、鍋に入れてじっくり煮ると、不思議なくらい甘く柔らかくなって、それはそれは美味しい。
(撮影・Kodak M35)
フィルムカメラで撮った写真は、夢の中で見える風景に似ている。
撮影・文 目次ほたる
(プロフィール写真/撮影・ヤツナミトモ)