記憶のはしっこ特別企画「セルフプリントに挑戦!」
25 Photos「写真初心者がある日カメラを渡されて、毎週写真の連載をしたら、どんな変化が起こるのだろう」
当連載「記憶のはしっこ」は、そんなコンセプトで始まりました。
最初のころは、カメラの使い方に戸惑ったり、どんな写真を撮ればいいかわからず苦戦していたものの、連載を重ねるごとに、「見てくださっている方々にもっと楽しんでもらえる写真が撮りたい」「写真についてもっと知りたい」という気持ちが強くなっています。
写真についてより深く知るために、写真集を買ったり、写真展や美術展にも足を運ぶようになったこの頃、徐々に興味を持ちはじめたのが、カメラの原点となる「フィルムカメラ」でした。
記憶のはしっこ特別企画「セルフプリントに挑戦!」
25 Photos「写真初心者がある日カメラを渡されて、毎週写真の連載をしたら、どんな変化が起こるのだろう」
当連載「記憶のはしっこ」は、そんなコンセプトで始まりました。
最初のころは、カメラの使い方に戸惑ったり、どんな写真を撮ればいいかわからず苦戦していたものの、連載を重ねるごとに、「見てくださっている方々にもっと楽しんでもらえる写真が撮りたい」「写真についてもっと知りたい」という気持ちが強くなっています。
写真についてより深く知るために、写真集を買ったり、写真展や美術展にも足を運ぶようになったこの頃、徐々に興味を持ちはじめたのが、カメラの原点となる「フィルムカメラ」でした。
デジタルカメラを使って写真を撮る傍らで、自分でフィルムカメラを購入して撮影してみると、今まで知らなかったフィルム写真の魅力にあっという間に夢中になってしまいました。
そして、フィルム写真の魅力をもっと引き出したいと思い、興味を持ったのが「プリント」です。
自分で撮った写真を、自分の手でプリントすることで、より自分の表現したい写真を作り出せるそう。
「せっかくフィルム写真を始めたのだから、プリントするところまで自分の手でやってみたい」
そう考えて今回は、「写真を撮る」だけではなく、その先にある「写真を作る」に着目するため、カラーネガフィルムのプリント(紙焼き)のワークショップに参加してきました。
ネガカラープリント(紙焼き)ってなに?
ネガカラープリント(紙焼き)とは、現像処理をしたあとの「ネガフィルム」を、光に反応する感光材料を塗った「印画紙」という特殊な紙に焼き付け、複写したもののことを言います。
昔は、1度の撮影で1枚の写真しか得られなかったものが、紙焼きの登場によって、ネガがあれば何度でも写真を作れるようなったことが、画期的だったそうです。
今だから、やっておきたいフィルム写真のプリント
「ネガカラープリントって、やっぱり手間がかかる」
というのが、ワークショップを終えての正直な感想でした。
けれど、手間がかかるから悪いのではなく、「手間がかかるから良かった」んです。
私は、いわゆる「デジタル・ネイティブ世代」に生まれたため、幼い頃から当たり前にデジタルカメラがあり、物心ついたときにはカメラ機能のついた携帯やゲーム機で写真を撮って遊んでいました。
今はほとんどの人が高画質の写真が撮れるスマホを持っていて、ボタンを押せば誰でも簡単に撮影ができるし、プリントや編集も難なくできる時代です。
そんな環境で生まれ育ったからこそ、フィルムで写真を撮って、それを自分の手でプリントする時間は、いつもよりずっと物理的に写真の奥深さに触れるきっかけになったと思うのです。
デジタル写真の「データ」ではなく、手で触れられるネガに光を通して、紙に焼き付けていると、写真を形作っているのは、まさに「光」だったんだと改めて実感しました。
また、光の入らない暗室で、高価な印画紙を無駄にしないよう、手が震えそうになりながらプリントに臨んだり、好みの写真になるまで試行錯誤を繰り返す瞬間は、手に汗握る緊張感を味わえます。
写真を作り出す過程に真剣に向き合えば向き合うほど、完成した写真を手にしたときの喜びはたまりません。写真の魅力を、肌で感じられる時間でした。
さっそく、ワークショップスタート!
今回は、東京入船にある「アトリエシャテーニュ」さんで行われている「初心者向けカラープリント ワークショップ」にお伺いしてきました。
持ち物は、自分で撮影した現像済みのネガと、洋服が汚れないように着用するエプロン。
あとは、好きな写真家の写真集などがあると、プリントの完成イメージを決めやすくなるそうです。
実際に作業をする暗室に入ってみると、プリントに使う本格的な機械が立ち並んだ様子に初心者の私は圧倒されてばかりでした。
マンツーマンでサポートしてくださる講師の金子さんの説明を受けつつ、いざプリント開始です!
①持参したネガのなかから、プリントしたいネガを選ぶ
まずは最初に、プリントするネガを選びます。
どのネガにしようかと散々迷いながらも、記念すべき最初のネガに選んだのは、下の写真。画像は、すでに写真屋さんでデータ化してもらっていたものです。
雨の日の原宿を撮ったこの写真は、傘の青色と背景の色のニュアンスがお気に入り1枚です。
実際のネガはこちら。
②選んだネガを引き伸ばし機にセット
プリントするネガが決まったら、次は引き伸ばし機にネガをセットしていきます。
今回使わせていただいた引き伸ばし機は、こちら。
カラーネガのプリントでは、この引き伸ばし機を使って、印画紙へ露光をします。
ネガキャリアをパカッと開いて、
中央の四角の中に、ネガの画面が収まっているかを確認しながら挟み込む。
ネガについたホコリをブロアーで丁寧に取り除いて、
ネガキャリアを引き伸ばし機に装着したら、セット完了!
③画面サイズを決める
ネガをセットし終えたら、次はプリントする画面の大きさを決めます。
あらかじめ見せていただいた画面サイズのサンプルのなかからサイズを選びました。
サイズが決まったら、「イーゼル」と呼ばれる印画紙をセットする台を、好みの画面サイズに合わせて調節していきます。
④レンズの絞りを決める
引き伸ばし機にはレンズが付いており、ネガの上から当てた光が、その下にあるレンズを通り抜けて、イーゼルに置いた印画紙に到達し、露光されます。
最初は、「f8」に絞りを設定しました。
レンズの下に手をかざしてみると、赤い光が出てきているのがわかります。
⑤カラーバランスを調整する
次は、カラー写真を手焼きするときの一番の醍醐味である、色の調整をしていきます。
引き伸ばし機に付いている、イエロー・マゼンタ・シアンのダイヤルを回しながら、イメージに合う色が出来上がるまで少しずつ調整を繰り返します。
なんだか科学の実験をしているような気分で、ワクワクしながらダイヤルを回しました。
私は、鮮やかな色調よりも、くすんだ色合いが好きなので、今回は少し黄みを帯びた、くすんだ色作りに挑戦することに。
講師の金子さんのアドバイスで、まずは標準的な色が出る、「Y-45,M-45,C-0」にダイヤルを合わせます。
⑥露光時間を決める
カラーバランスの調整と並んで、プリントの出来上がりを大きく左右させるのが「露光時間」、つまり、印画紙に光を当てる時間です。
基本的には、露光時間が長いほど写真が濃くなっていき、長すぎると真っ暗な写真になってしまうので、要注意。
イメージ通りの画面ができるまで、カラーバランスと共に露光時間も少しずつ調節していきます。
今回は、引き伸ばし機の隣に設置されていた、こちらのタイマーで時間をはかりました。
最初は、「6秒」に設定。
ダイヤルで「露光時間」を設定でき、スイッチで「露光の開始」や「フォーカスの確認」できる便利なタイマー。
⑦テストピースを使って、プリントテストをする
「いよいよプリント!」と言っても、よりイメージに近いプリントを作り出すためには、光や色の微妙な調節を何度も繰り返していかなければなりません。
しかし、高価な印画紙をそのまま使って調節すると、コストがかさみますよね。
そこで活躍するのが、「テストピース」
テスト用に通常より小さくカットした印画紙にプリントすることで、コストを抑えながら、理想的なプリントを作っていきます。
印画紙は光に反応する「感光材料」が塗られているため、少しでも光があたってしまうと、プリントには使えなくなってしまいます。
そのため、光の入らない「暗室」で手探りで作業しなければなりません。
真っ暗な環境で作業するのに慣れていないため、最初はちょっとパニックになりそうだったので、すでに露光された印画紙を使って、暗室での動きを練習をしました。
真っ暗な環境に慣れてきたら、テストスタート!
暗室での作業の流れ
1・部屋の電気を消す
2・光が入らないように管理された引き出しから、印画紙を取り出す
3・印画紙をイーゼルにセットする
4・タイマーの時間を確認して、露光する
5・露光が終わったら、印画紙を裏返して、「プロセッサ(印画紙自動現像機)」にかける
6・現像が終わったら、プリント完了
こちらが「プロセッサ(印画紙自動現像機)」
暗室の内側にあるローラーのような部分に露光した印画紙を入れると、
4分ほど経ったころに、暗室の外側にある取り出し口から完成したプリントが出てきます。
機械のなかで、「現像・漂白定着・水洗・乾燥」のすべて行ってくれる、プロ仕様の機械です。
ちなみに、印画紙を表向きで入れてしまうと、プロセッサのなかで印画紙が絡まって、自分の写真が無残な姿で戻ってきます。
(ワークショップ中に、実際に失敗してしまいました……)
⑧出来上がったテストピースを確認しながら、調節を繰り返す
今回は完成品ができるまで、3枚のテストピースをつくりました。
左から、テスト1回目、2回目、3回目の順です。
【テスト1回目】
・標準的なカラーバランスと露光時間の設定でできたプリント。
・全体的にマゼンタが強く、露光時間が長かったのか画面が暗い印象。
絞り→f8
カラーバランス→Y-45,M-45,C-0
露光時間→6秒
【テスト2回目】
・少しマゼンタを抜き、イエローを増やしたプリント。
M-55,C-0
露光時間→6秒
【テスト3回目】
・マゼンタをさらに抜き、イエローをさらに増やしたプリント。
・かなりイメージに近づいた印象。
絞り→f11
カラーバランス→Y-40,M-56,C-0
露光時間→6秒
イメージどおりの画面を作るには、試行錯誤が必要でしたが、
少しずつ自分の理想に近づいていくプリントをみるたびに心躍ります。
⑨ついに完成!
最後にカラーバランスと露光時間の微調整をして、本番の六切の印画紙にプリントすることに。待ちに待った完成品がこちらです。
何度も調整を繰り返して、完成したプリントはそれだけ感動も大きいもの。
完成品ができたときは、嬉しくて思わず「最高だー!!」と、はしゃいでしまいました。
くすみを帯びた少し黄みがかった画面は、私がイメージしていた通りの色合い。
講師の金子さんの丁寧なアドバイスのおかげもあり、理想の一枚ができあがりました。
他にもこんな写真をプリントしました
ワークショップの時間にすこし余裕があったので、他にも2枚の写真をプリントしてみました。どちらもイメージ通りの色味にできあがって、大満足です。
・赤い花と女性の写真
・化石が飾られたショーウィンドウの写真
最後は、横写真のプリントにも挑戦できました。
初心者でも本格的なネガカラープリントが体験できる「アトリエシャテーニュ」 さん。
今回、ワークショップに参加させていただいた「アトリエシャテーニュ」では、完全予約制で誰でも本格的なネガカラープリントを体験できるワークショップを開催しています。
その他にも、プロ仕様の設備をお借りできる暗室レンタルや、各種ワークショップ、写真展の開催など、写真好きの心をくすぐるアトリエです。
非日常感を楽しめる暗室体験や、一枚の写真を自分の手で作り上げる感動を体感しに、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
「アトリエシャテーニュ」ホームページ