目次ほたる 「記憶のはしっこ」#37
7 Photosモデル・ライターとして活動する20歳、目次ほたるが写真を通して、忘れたくない日々の小さな記憶をつなぐ連載「記憶のはしっこ」の37回目です。
目次ほたる 「記憶のはしっこ」#37
7 Photosモデル・ライターとして活動する20歳、目次ほたるが写真を通して、忘れたくない日々の小さな記憶をつなぐ連載「記憶のはしっこ」の37回目です。
(撮影・Canon EOS Kiss M2 )
待ちに待ったゴールデンウィークがやってきた。
個人事業主である私にとって明確な休みのようなものは存在しないのだけれど、長期休み独特の浮足立った雰囲気はやはり気分が上がる。
ゴールデンウィークとは言っても、去年に引き続き、コロナウイルス対策のために外出は控えたかったので、その日は同居人とその家族と一緒に家でバーベキューをすることにした。
骨付きの肉を焼き、魚を焼き、野菜を焼き。それに、同居人の実家にはピザ窯があるので、みんなでピザを作る。
(撮影・iPhone Xs Max )
私が作ったのは、サラミの乗ったマルゲリータ。
冷凍のピザ生地をこねて形をつくり、上にトッピングを乗せたら、あとは窯で焼くだけ。
焼くのは、元ピザ職人だった同居人に任せたけれど、窯でピザが焼けていく様子を見るだけで十分楽しい。薄めの生地がパリッと香ばしい、美味しいピザが焼きあがった。
遠出はできないゴールデンウィークだったけれど、開放感のあるバーベキューのおかげで、心もお腹もいっぱいになれた。
(撮影・Canon EOS Kiss M2 )
事件が起こったのは、ゴールデンウィークの最終日。
小雨が降ったその日、湿った空気が漂うなかで、私は小さなダンボールのなかで動く、とある生物を見て、目を丸くしていた。
(撮影・Canon EOS Kiss M2 )
子猫、子猫、子猫。
同居人の持つダンボールのなかで、モソモソと動いていたのは3匹の子猫だった。
子猫というよりももっと小さく、それはまだ生まれて数日しか経っていないであろう赤ちゃんの姿。
どうやら、野良猫が古い自動車の中で子どもを生んで、そのまま置いていってしまったらしい。何時間経っても親猫が帰ってこない様子を見かねて、同居人が連れて帰ってきたのだった。
(撮影・Canon EOS Kiss M2 )
昔からなぜか猫とは縁があって、数年前にも実家で妹が拾ってきた赤ちゃん猫を育てていたので、猫の育て方は熟知していた。
すぐさま部屋を温めて、ダンボールのなかで子猫たちを毛布で包み、その下にペット用のホットカーペットを敷く。体温調節ができない子猫にとって、体温の低下は命に関わる。
その後、近くのホームセンターで子猫用の哺乳瓶とミルクを調達し、飲ませることにした。
最初は飲みが悪かった猫たちも、慣れてくるとグビグビとミルクを飲み干し、お腹がいっぱいになったら寝てしまう。
久しぶりの子猫のお世話で最初は戸惑ったが、過去の経験のおかげで猫たちを助けられたのだから、何事も経験しておくものだなと思う。
(撮影・Canon EOS Kiss M2 )
その後、数日の間で子猫たちの里親さんが見つかり一安心。
うちで育てたいのは山々だが、先住猫が2匹いる手前、さすがにもう3匹は育ててあげられない。
平穏な休みの日に突如現れた子猫たちは、里親さんに引き渡すまでの間、うちで育てることとなった。
3時間に1回のミルクタイムに追われているおかげで寝不足だが、この眠気から開放されるころには、子猫たちが我が家からいなくなってしまうと思うと、やっぱり寂しい。
撮影・文 目次ほたる