目次ほたる 「記憶のはしっこ」#45
8 Photosモデル・ライターとして活動する20歳、目次ほたるが写真を通して、忘れたくない日々の小さな記憶をつなぐ連載「記憶のはしっこ」の45回目です。
目次ほたる 「記憶のはしっこ」#45
8 Photosモデル・ライターとして活動する20歳、目次ほたるが写真を通して、忘れたくない日々の小さな記憶をつなぐ連載「記憶のはしっこ」の45回目です。
(撮影・写ルンです)
暑過ぎて、カメラを持って散歩するのも躊躇われる毎日が続いている。
写真は楽しいけれど、一歩外に出れば非情なほどの太陽光によって、頭のてっぺんからつま先まで黒焦げにされてしまうんじゃないかとすら思う天候には、その楽しさも吹っ飛びそうになる。
こういうとき、撮影の頼れる味方となるのが、インスタントカメラだ。
私はこの連載を始めてからというものの、日常的に「写ルンです」を愛用するようになった。
焦げつくほど暑い日も、凍てつくほど寒い日も、雨の日も風の日も、とりあえずカバンに写ルンですさえ入れておけば、すぐに取り出して撮影できるから重宝しているのだ。
(撮影・写ルンです)
最近は、デジタルからフィルムまで色々なカメラを使う機会が増えたし、私のフィルムカメラコレクションも恐ろしいほどに増殖している。しかし、多種多様なカメラを使ってみればみるほどに、インスタントカメラの魅力が際立つように感じる。
1つ1000円とちょっとで買えて、ボタンを押すだけで簡単に撮れる。フィルムを入れる必要もないし、出す必要もない。ボディが傷つかないように気を遣う必要もないし、管理もそれほど難しくない。フィルムカメラだからその場でデータ確認もしなくていい。
もちろん手入れに気を遣いながら、大事に管理して、どんなフィルムを入れて、どんなふうに撮ろうか悩む普通のフィルムカメラも楽しいけれど、こういうときのインスタントカメラは、いわば”最強”だ。
「夏の撮影疲れに、インスタントカメラを!」
今年の夏は、そう大々的に打ち出していきたい所存である。
(撮影・写ルンです)
撮り終われば、そのまま写真屋さんへ現像に出して、その写真屋さんでまた写ルンですを買う。
そんな日々を繰り返していくうちに、早くこの暑すぎる夏が終わってくれることを願うばかりだ。
(撮影・Canon EOS Kiss M2 )
久しぶりに近くの博物館に行ってきた。
夏といえば、「博物館!」と思ってしまうのは、きっと小学校のときにやった夏休みの自由研究の影響だろう。幼少期からの刷り込みは恐ろしいなと思う。
けれど、自由研究でなにを研究したかはちっとも覚えていない。覚えていないのか、そもそもサボっていたのかはわからない。思い返せば、宿題はあまりやらないタイプだった。
(撮影・Canon EOS Kiss M2 )
博物館は、いくつになってもワクワクする場所だ。
化学や物理、生物学などについてまったく明るくないが、目の前でわからないことがなんとなくわかるように説明されているのを見ると、自分がちょっとでもその未知の世界へ足を踏み入れている気分になれる。
(撮影・Canon EOS Kiss M2 )
けれど、今の私はそういう高度で膨大な知識を自分には理解できないものだと、理解してしまっている。あるいは、そう思い込んでいる。
小さい頃は博物館に置いてあるものすべてに強く興味を持っていたし、憧れの対象だった。
それは、きっと自分にもこのすべてを理解できるだろうという期待があったからだと思う。あの頃の私は星座のすべてを覚えようと奮闘していたし、河原に落ちている石から貴重な鉱物や化石が見つかるだろうと本気で探していたし、考古学者がなにかも知らずに将来の夢を考古学者と言っていた。
わからないことをわからないと知ることが、わかるようになる第一歩だとどこかの哲学者が言っていた気がするが、「ああ、これは私の手には届かないものなのだな」とわかってしまった瞬間に、あの曇りのない好奇心と清い憧れが少しずつ薄れていったのだ。
(撮影・Canon EOS Kiss M2 )
そういうつまらない諦めみたいなものを身に着けてしまっても、博物館という場所は「興味を持ち、理解したいと思う気持ち」を全方向から刺激してくる。
精巧な模型や緻密に作られた展示の数々、今にも動き出しそうな動物たちの剥製に、わかりやすい言葉で丁寧に説明文が書かれたガイド。
それら一つ一つが失いつつある好奇心の灯火に薪をくべてくれるのだ。
そういう場所へ定期的に訪れることがとても大切なのだと、好奇心が薄れつつある今だからこそわかる。
撮影・文 目次ほたる