目次ほたる 「記憶のはしっこ」#47
9 Photosモデル・ライターとして活動する21歳、目次ほたるが写真を通して、忘れたくない日々の小さな記憶をつなぐ連載「記憶のはしっこ」の47回目です。
目次ほたる 「記憶のはしっこ」#47
9 Photosモデル・ライターとして活動する21歳、目次ほたるが写真を通して、忘れたくない日々の小さな記憶をつなぐ連載「記憶のはしっこ」の47回目です。
コロナ禍が始まってから、家で料理をすることが格段に増えた。
以前は仕事が忙しく、コンビニのお弁当やスーパーのお惣菜で済ませることが多かったのだが、ここ2年はそういったものを食べることがめっきり減って、代わりに自炊するようになったのだ。
もともと料理は好きだったが時間や気持ちに余裕がないと、なかなか自分でおいしいものを作ろうとは思えない。
コンビニやスーパーで売られている食べ物のレベルは日に日に上がっていて、下手すると自分で作るよりおいしいことすらあるから、どうせ疲れているならそれで済ませてしまおうと思ってきたのだ。
しかし、外出自粛でほとんど家にいるようになってから心の余裕ができたのか、料理をする気力がほぼ毎日湧くようになったのは、不幸中の幸いだと思う。
毎日料理をするようになってから、気になることがあった。
料理を盛り付ける食器についてだ。
美味しいごはんを食べるなら、素敵な食器に盛り付けたいと思うようになった。しかし、我が家にあるのは、量販店で売っているような無難な食器ばかり。悪くはないが、一生懸命作った料理をのせるのは、心なしか物足りなく感じる。
「食卓にすこしでも彩りを与えてくれる食器がほしい」
そう思って、栃木県芳賀郡にある益子町に行ってきた。
益子町は「益子焼」という陶器が有名で、街中の至るところに窯元や陶芸屋さんが並んでいる。
江戸時代末期から続く伝統工芸品である益子焼は、荒くゴツゴツとした土を素材とし、そこに漆黒や赤茶色などの釉薬(ゆうやく)を流し込んで作る。重厚な色合いと肉厚な見た目が特徴的な陶器だ。
かつては焼き上がりの質感が荒々しいことから繊細な工芸品には不向きと言われ、主に壺や水瓶などとして作られていたらしいが、最近では茶碗や湯呑など日用的な食器も作られているようだ。
益子町のカフェやレストランでは益子焼の食器で料理が出されており、実際に使ってみると、少しざらついた肌触りに温かみを感じて、とても気に入った。
益子焼は「登り窯」と呼ばれる、かまぼこのような形状の窯で焼く。
最近ではガスを利用して焼く窯元も増えているらしいが、中には伝統的に薪を燃やして焼く窯元もあるそうだ。
薪で焼いている登り窯の近くはモクモクとした煙に覆われていて、薪の焼ける香ばしい香りが漂ってくる。
この日も暑いなか、腕まくりをした職人さんがせっせと益子焼を焼いている姿が見えた。
せっかくの益子町だったが、あまりにたくさんの食器が売られていたため、どの食器を買ったらいいか選びきれず、今回は小さな箸置きを2つ購入して帰ることにした。
次は必要な食器をリストアップして、計画的に探したいと思う。
なぜか町中にヤギがいた。ヤギと陶器の町、益子町である。
そういえば、益子町の近くにコスモス畑があることを思い出し、せっかくなのでコスモスも撮影してきた。まだ満開とまではいかなかったが、天気が良かったことが幸いだった。
コスモスの和名は「秋桜」。秋晴れの下で揺れるその姿を撮影できて、大満足だ。
撮影・文 目次ほたる