vol.42「わたしの父はあまり写真を撮らない」
9 Photos俳優・カメラマンとして活動する彩雪が、日常で見つけたドキドキを写真を通してお届けする連載、42回目は「わたしの父はあまり写真を撮らない」です。
vol.42「わたしの父はあまり写真を撮らない」
9 Photos俳優・カメラマンとして活動する彩雪が、日常で見つけたドキドキを写真を通してお届けする連載、42回目は「わたしの父はあまり写真を撮らない」です。
(今回の写真は全て父と母が撮影したものです。)
わたしの父はあまり写真を撮らない。
自ら携帯電話を取り出して写真を撮っているところなんて見たことがないし想像もつかない。
もちろんわたしや母がお願いすれば嫌がることなく撮ってくれるが、自ら写真を撮りたいと思うことは滅多にないそうだ。
母は逆になんでも撮りすぎなくらい撮る。
うちの親は仲が良くて、よく休日になるとアクティブな母が父に頼んでいろんなところに2人で行っていて、その写真が家族のグループラインに送られてくる。風景、食べたもの、お互いの写真、2ショット、大量だ。そんな母を見兼ねて父が母の誕生日にセルカ棒(自撮り棒)をプレゼントしたというのを聞いてほっこりした。それからというもの送られてくる写真の中に、腕の長い父がセルカ棒を使って撮った2ショットも追加されるようになった。
それが送られてくるのをこっそり楽しみにしている。
そんな正反対な父と母にどういう時に写真を撮るのか聞いてみた。
母は記録として撮るらしい。
今日起こった出来事を思い出せるように。写真がないと思い出せないことが多すぎるから。
見返した時に『楽しかったな〜』ってもう一度ワクワクできるから。
逆に父は、印象的なことだったら覚えてるから写真に収めなくてもいいらしい。
じゃあどんな時に写真を撮るのか聞くと、この景色が綺麗だったとか、うちの双子の猫”ハル”と”マキ”がかわいい瞬間など、それを共有したいときだと言っていた。
『これ撮っておいたらお母さんが喜びそうだと思って』と言っていたのがとっても印象的でなんだかわたしまで嬉しくなった。
そして”共有したいとき”
この言葉を聞いたときにやけに納得した。
お盆とお正月に実家に帰れたとしても1年にうちに親に会えるのは10日間もない。
それでも写真があるから『最近どこに行った』とか、『相変わらず元気そう』だとか、そういうことを知ることができるし、わたしの親もわたしの送る写真やInstagramなどを見て安心してくれていると思う。
SNSの普及によって、久しぶりに会う友達でもなんとなく久しぶり感がなかったり、近況を知っている。それはとても不思議な感覚だと親世代の方々は言う。
写真や動画にわたしたちはかなり頼って生活しているし、それを手軽に共有できる時代に改めて感謝する良い機会になった。
撮影・文 彩雪