vol.44「わたしの撮る写真が変わった日」
13 Photos女優・カメラマンとして活動する彩雪が、日常で見つけたドキドキを写真を通してお届けする連載、44回目は「わたしの撮る写真が変わった日」です。
vol.44「わたしの撮る写真が変わった日」
13 Photos女優・カメラマンとして活動する彩雪が、日常で見つけたドキドキを写真を通してお届けする連載、44回目は「わたしの撮る写真が変わった日」です。
わたしの大好きな写真家のひとりに、”ソール・ライター”という人物がいる。
彼の写真を初めてみたのは確か渋谷のBunkamuraで2017年に開かれた写真展だった。
元々わたしは写真展や美術館に行くのが好きで、休日はよくいろんな展覧会に足を運んでいた。全く詳細を知らなくても、行き当たりばったりでフライヤーに惹きつけられるように入ることもあった。作品に囲まれたその空間が好きだった。
そんなある日出会ったのがソール・ライターだった。
彼の撮った写真を見たその日から人生が変わったと言っても過言ではない。
彼の写真の何がすごいかって、本当にわたしたちが普段見ているような景色をとびきり面白く美しく撮ることだ。
こんなにもアートが溢れかえっている世界の中でわたしは生きているんだと喜びさえ感じられる。
撮ろうと思って綺麗に撮るのではなく、ただそこにあるものを瞬きをしてただ見ているかのように撮る。あの日、展示からの帰り道に、今までに抱いたことがないようなワクワクする感覚を味わった。
【私が写真を撮るのは自宅の周辺だ。神秘的なことは馴染み深い場所で起きていると思っている。なにも、世界の裏側まで行く必要はないんだ】<ソール・ライター>
彼の作品は人の表情が見えないことが多い。
人の背中だったり、物で顔が隠れていたり、はたまたブレていたり。
それにも関わらずひしひしと滲み出ている叙情性。とても不思議で仕方ない。
【人間の背中は正面よりも多くのものを私に語ってくれる】<ソール・ライター>
そんな色気のある写真を撮りたいとわたしも憧れ、真似するように撮っていた時期がある。そのとき、写真を撮ることが楽しくて楽しくて仕方なかった。自己表現できる手段のひとつを手に入れた気がした。
彼が紡ぐ言葉も素敵だった。”言葉は人を表す”というが、その通りだと思う。
物事を捉える目が澄んでいる。
わたしの友人にもそういう人がいる。
わたしに嫌なことが連続して起こって「本当に今日はアンラッキーすぎる!!!」と愚痴を聞いてもらったところ、その子は「いやラッキーすぎるやろ!!!」と予想外の言葉が返ってきた。
全然理解が追いつかず、理由を聞くと「その出来事がないと普段がどんなに幸せなのか恵まれてるのか気付けないでしょ。お金が最初からある人が幸せとは限らないのと一緒。ないものがあるからこそ、普段からあるものに感謝できるんだよ。だからアヤは今日はそれに気付けたラッキーな日」。
こんな人が身近にいるおかげで自分もポジティブ変換ができるようになってきたのかもしれない。
”人は物理的に身近な人5人の影響を受ける”って聞いたことがある。
わたしは尊敬できる人たちに囲まれていて、憧れの写真家にも出会えて、やっぱりラッキーだ。
【肝心なのは何を手に入れるかじゃなくて何を捨てるかなんだ】 <ソール・ライター>
これもずっと心に残っている言葉のひとつだ。
やっぱり、すべては見方次第。
撮影・文 彩雪