vol.48「笑顔が伝染する」
10 Photos俳優・カメラマンとして活動する彩雪が、日常で見つけたドキドキを写真を通してお届けする連載、48回目は「笑顔が伝染する」です。
vol.48「笑顔が伝染する」
10 Photos俳優・カメラマンとして活動する彩雪が、日常で見つけたドキドキを写真を通してお届けする連載、48回目は「笑顔が伝染する」です。

『過去は美化される』
わたし自身、たくさん苦い思い出もあるはずなのに、楽しかったことや嬉しかったことばかり覚えている。


学生時代の部活動だって、やめたくなるほど辛い練習メニュー、接戦の試合に負けたこと、大事な試合の前に怪我をしてしまったこと、チーム内のいざこざ、なども経験してきた。でもこれはこういうときに頑張って思い出そうとしないと思い出せないくらい色褪せてしまっている。


人間関係でいうとわたしの場合は元恋人なんかもそうだ。喧嘩、嫉妬、すれ違いなどもあったはずなのに一緒に行った場所や楽しかったこと、ありったけの笑顔の方がすぐに出てくる。

受験シーズン、1人暮らしをし始めた18歳のとき、高校数学の教員をしていたとき、上京してきた1年目、など、節目節目を思い出してみても全部そうだ。

それはおそらくわたし自身、”苦い思い出=人生経験”とポジティブ変換しているからというのもあるが、そもそも物理的に写真に残っていないからというのもあるのではないかと思う。
わたしのカメラロールの中に残っている思い出たちを見ると、みんな楽しそうだ。自分が幸せだと思ったとき、残しておきたいと思ったとき、共有したいと思ったとき、そういうときに写真を撮る。悲しい、苦しい、辛い、悔しいなどといった感情を抱いているときにはなかなか写真を撮る気にならないだろう。そのおかげで時間の経過とともに忘れられることもあるということだ。

それにしても、笑顔の写真というのは本当に良い。Twitterなどに流れてくる見知らぬ方の写真でさえもなぜか見ているとこっちまで温かい気持ちになる。
笑顔というのは伝染する。
少し前に新潟にある母方の祖父母の家に遊びに行った。ある話題でうちの母がツボって笑いが止まらなくなったとき、その話に、というより、笑いが止まらない母を見てみんなが爆笑し始めるという現象が起こった。この話をこうやって書いている今でもなんだかニヤけてしまう。
先日、わたしが出演する舞台を観に来てくれたときに母と会ったのだが、3ヶ月経ってもあの日に撮った写真を見ると全員が満面の笑みだった光景が思い出される。他にもたくさん話をしたはずなのにその時間のことが強烈に頭に残っている。
笑いが耐えない、それは本当に幸せな時間だと思う。

社会人になってから爆笑することが極端に減ってしまった人は多いのではないだろうか。わたしもそうで、学生時代、なんであんなに毎日のようにお腹を抱えるほど笑っていたのかと不思議なくらいだ。だからたまにこうやって爆笑することがあると『ああ、わたし今幸せだ』と頭にこんな思考がスッとよぎる。わたしだけなのだろうか。

どうせならたくさん笑う人生でありたい。
それにしても”笑う門には福来る”っていうことわざがとても好きだ。
撮影・文 彩雪