追悼 平成の女傑ウオッカ死す
25 Photos2019年4月1日、GⅠ7勝馬ウオッカが、配合のための滞在先であったイギリス・ニューマーケットで蹄葉炎のため亡くなった。15歳だった。64年ぶりの牝馬によるダービー制覇、宿敵ダイワスカーレットとの競馬史に残る5度にも渡る対決。多くの敗北を糧に、数々の常識を覆してきた彼女のレースをアーカイブ。
追悼 平成の女傑ウオッカ死す
25 Photos2019年4月1日、GⅠ7勝馬ウオッカが、配合のための滞在先であったイギリス・ニューマーケットで蹄葉炎のため亡くなった。15歳だった。64年ぶりの牝馬によるダービー制覇、宿敵ダイワスカーレットとの競馬史に残る5度にも渡る対決。多くの敗北を糧に、数々の常識を覆してきた彼女のレースをアーカイブ。
2006年10月29日、京都で行われた1600m新馬戦を2番人気ながら、2着に3馬身以上つけ圧勝デビュー
デビュー戦の鞍上は佐賀の鮫島克也
2戦目の黄菊賞は後手を踏み2着。迎えた阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)では、1番人気で3連勝中の快速馬、アストンマーチャンを直線で差し、見事初GⅠを達成した
タイムは1分33秒1で、阪神1600mの2歳レコードとレースレコードを同時に塗り替えた
2007年、年明け初戦のエルフィンSを快勝後、チューリップ賞へ。このレースに出走してきたダイワスカーレットとの初対決となった。レースはマイペースで逃げたダイワスカーレットを直線で差し切り、3連勝。ウオッカ“1強”時代到来か、と思われた
2007年4月8日に行われた桜花賞(GⅠ)。3番手につけたダイワスカーレットをマークする絶好のポジション。しかし直線に入ったところで、ダイワスカーレットがウオッカに並びかけられる前にスパート。同時に馬を外へ持ち出し、そこで2頭が接触。これで一気に両馬の差が広がりライバルに敗戦を喫した
桜花賞の敗戦後、次走はオークスではなくダービーへ。ビワハイジ以来11年ぶりの牝馬の挑戦となった。ダービーへの最終追い切りは、四位騎手を背に栗東の坂路でおこなわれた
第74回日本ダービーは、フサイチホウオー、ヴィクトリーに次ぐ3番人気に支持された。ハナを切ったアサクサキングスを先頭に、中団で折り合い直線へ
牡馬をなで斬り、2着馬に3馬身差をつけ64年ぶり、戦後初の牝馬ダービー制覇。鞍上の四位騎手も初勝利。ダービージョッキーの仲間入りを果たした
皇太子殿下の台覧で、入線後馬上で脱帽し最敬礼を行った
宝塚記念を8着と敗れ、秋は凱旋門賞を目標とした。しかし故障により断念。秋の初戦は秋華賞で再びライバル、ダイワスカーレットと相まみえることに。結果は3着とまたもや後塵を拝した
その後は敗戦が続き、迎えた2008年安田記念、乗り替わった岩田騎手を背に快勝。ダービー以来約1年ぶりの勝利となった
秋初戦の毎日王冠を2着とし、迎えた第138回天皇賞(秋)。ダイワスカーレットとの5度目の対決となった。ハナを切ったダイワスカーレット、中団でかまえたウオッカ。残り200mを切ったところで先頭にたった。しかしさらに差し返すダイワスカーレット
馬体が一つになったところがゴールであった
両馬にまたがった名手・安藤勝己騎手、武豊騎手ですら判断のつかない結末は、写真判定に持ち込まれた。長い時間を要し場内がざわめく中、13分後、1着に14番のランプが入れ替わり点灯。ウオッカの勝利が確定した。
着差はたった2センチ、コースレコードの決着であった。ダイワスカーレットとの対戦成績2勝3敗としたウオッカ。これが両馬にとって最後の対決となった
2009年、ドバイ遠征を2戦2敗で終え、第4回ヴィクトリアマイルに出走。直線抜け出すとあとはワンサイドゲーム、7馬身差の圧勝であった
中2週で出走した第59回安田記念、直線進路がふさがり万事休すかと思われたが、残り200mを切ったところで狭い進路をこじ開け、先頭に立つダービー馬ディープスカイを差し切り連覇を達成した
2009年秋、毎日王冠から始動するも2着、天皇賞(秋)を3着と連敗を喫し迎えたジャパンカップには、ブリーダーズカップ連覇のコンデュイットなど錚々たるメンバーが集った。ウオッカは連敗中にもかかわらず1番人気に支持された
レースはリーチザクラウンの作ったハイペースの中、好位4番手を追走のウオッカ。直線早々に先頭に立ち押し切りを図るも、ハイペースを利して大外からオウケンブルースリが襲いかかり、鼻面が合わさったところがゴールだった。その差またもや2センチでの勝利であった
日本生産の牝馬として初のジャパンカップ制覇、GⅠ7勝目。昨年に続き年度代表馬に選出された。しかしレース後に鼻出血を発症。年が明けて再びドバイに渡るも8着に敗れたのが最後のレースとなった
ウオッカ
2004年4月4日生まれ
生産 カントリー牧場
父 タニノギムレット
母 タニノシスター
馬主 谷水雄三
調教師 角居勝彦
26戦10勝(うちGⅠ7勝)
JRA獲得賞金 13億487万6千円
2011年、JRA顕彰馬に選出。2014年、東京競馬場内のローズガーデンにウオッカの馬像が建立された
2019年4月1日、英国ニューマーケットで蹄葉炎により安楽死の処置が取られた。
中山、阪神、福島の3場では追悼の献花台と記帳台が設置され、多くのファンが別れを惜しんだ