vol.5「サウナの入り方は、マネなくていい‐休憩編‐」
9 Photosサウナライターとして活動する川邊実穂がお届けする連載「サウナで、わたしはわたしになる」。5回目は「サウナの入り方は、マネなくていい(お待ちかねの休憩編)」です。
vol.5「サウナの入り方は、マネなくていい‐休憩編‐」
9 Photosサウナライターとして活動する川邊実穂がお届けする連載「サウナで、わたしはわたしになる」。5回目は「サウナの入り方は、マネなくていい(お待ちかねの休憩編)」です。
「サウナで、あの『ととのう』を味わいたい!」
という声は、サウナデビュー前の方から、ちょっとした憧れの眼差しとともに言っていただける嬉しいコメントです。
テレビなどでも、「ととのった〜!」というフレーズはお馴染みになりつつありますよね。
ですが、みなさんに注目してほしいのは、その“ととのう”の前後の時間にあると私は思います。
サウナ、水風呂に入った後は、身体の水滴を拭き、休憩します。
休憩ではベンチに腰かけたりリクライニングチェアに身を委ねたり、
はたまた貸切サウナなどであれば、大の字に寝っ転がってもいいですね。
実は、休憩中の脳内は、とても不思議な状態と言われています。
頭がスッキリ覚醒していながら、だらんとリラックスもしている。
全く異なる状況が混在する、日常生活ではあり得ない現象。
これが“ととのう”と言われています。
私自身も休憩中の”ととのう”時間に、何度も助けられてきました。
行き詰まっていたところからハッと新しいアイディアを思いついたり、
はたまた「まぁ、なんとかなるかな」と前向きな気持ちに切り替えられたり。
ですが最近では「ととのう」こと自体より、
もっと尊いものが休憩時間にはある気がしています。
それは、そこにいる友達や仲間たちと、
同じような時間を楽しむ共体験です。
友達とご飯に行っても、私の机の上、お箸とおしぼりの隣にはスマホがいます。
おしゃべりを楽しんでいても、心のどこかで「あの件、大丈夫かな…」と気がそぞろだったり、メッセージの通知が来た途端に、意識が持って行かれてしまうことがある。
逆に「あ、ごめんちょっと」と友達がスマホをたぷたぷしていても、
それを嫌だとは思いません。
物事はものすごいスピードで進み、状況は常に変化するから、誰も、何も悪くない。
そうやってお互いが、一生懸命に毎日を生きている。
そんな時に生まれた、1時間の空白。
スマホは、ロッカールームにお留守番。
手持ち無沙汰になった私たちはおずおずと、
ほぐされていく身体の感覚や、湧きあがる心の声に、耳を傾けていく。
寒かったらポンチョを羽織るし、まぶしかったらタオルで目元を覆う。
そんな私の隣に、同じように全身を緩ませて、
今にもよだれを垂らしそうな友人がいる。
私はこんな時に、心臓から新しい血がトクトクと生まれ、全身を巡っていくような、じんわりあったかい気持ちに包まれます。
そして、
「あぁ、サウナを好きになって本当によかったなぁ」
と思うのです。
今、目の前に広がるこの情景は心から愛せて、信用できる。
だからサウナをあがって一緒にご飯を食べながら
「今日はめちゃくちゃととのったなぁ〜!」
「サウナの上段、めっちゃ熱いのにずっと座ってたよね!?」
といった後日談をシェアする前から私はもう、
「今日のサウナは完璧だった」
と笑みを浮かべているのです。
TOPおよび1枚目:「Quiet Storm Nasu(栃木県)」のオーナーさんに教えてもらった「OUSE SAUNA TUULI(福島県)」。美しい川と森とのマリアージュが最高に天国感。
2枚目:サウナ小屋の内気浴スペースにある暖炉にほっこり(「くらすサウナつるぎ」(富山県)、『絶景サウナ旅』取材時に筆者撮影)
3枚目:ハンモックに揺られながらハルジオン外気浴(「Quiet Storm Nasu(栃木県)」)
4枚目:友人に撮ってもらった だらんofだらんな写真(「山賊サウナ(神奈川県)」)
5枚目:高円寺サウナ部部長が優しい風を送ってくれたピースフルな時間(「Dotekage Camp(山梨県)」)
6枚目:シンと静まった夜にサウナ好きを待つ外気浴チェアたち(「Heidi Guest House(新潟県)」)
7枚目:撮影せずにはいられない、気持ちよさそうに水風呂にひたる2人(「サウナランド浅草(東京都)」)
8枚目:目玉焼きが一番輝くとき。サ友が作ってくれた焼きそばにon(「Dotekage Camp(山梨県)」)