vol.11JIKON SAUNA TOKYO小さな蕾はやがて大輪を咲かす
9 Photosサウナライターとして活動する川邊実穂がお届けする連載「サウナで、わたしはわたしになる」。11回目は「『JIKON SAUNA TOKYO』小さな蕾はやがて大輪を咲かす」です。
vol.11JIKON SAUNA TOKYO小さな蕾はやがて大輪を咲かす
9 Photosサウナライターとして活動する川邊実穂がお届けする連載「サウナで、わたしはわたしになる」。11回目は「『JIKON SAUNA TOKYO』小さな蕾はやがて大輪を咲かす」です。

ボランティアで訪れたあの日からおよそ8ヶ月。
この期間は私の想像にも及ばない、さぞかし濃いものだったのだろうとつい思いを馳せてしまう。
それは、目の前に広がる空間が圧倒的だったからだ。
私は「JIKON SAUNA TOKYO(略称 JIKON SAUNA)」(以下、「JIKON SAUNA」)に4回行っているが、その度に我が子のように鼻高々に語ってしまうのは、「サウナ・水風呂・外気浴」の3点に留まらない魅力がたっぷりあるからだと思う。


まず、玄関の暖簾をくぐるとどこか落ち着く懐かしさとシャープなスタイリッシュさが健在している。
「母屋のコンセプトは”ちょっと綺麗なおばあちゃん家”なんです」とオーナーの山本幹太さん(通称:カンちゃん)は笑う。
明治5年に建てられた古民家の壁も剥がさず、極力、建設当時の素材をそのまま活かしていると言う。約150年前の柱は徐々に水分が抜け、今が最も密度が高く、強靭だ。
気になるところを聞くたびに、想定を上回る話がどんどん出てくる。
それもそのはず、「JIKON SAUNA」の根っこには「作った人の顔が浮かぶ施設にしたい」という共通認識があるからだ。
そこに至ったのも、彼らだからこその理由がある。
「JIKON SAUNA」の運営は、日本最大級のサウナインスタメディア「サウナコレクション」(以下、「サウコレ!」)チーム。日々サウナの情報を発信しているが、特に自ら足を運んでサウナを体験する姿勢をとても大切にしているそうだ。
だからこそ、得た情報は知識としてだけでなく「これって良いよね」という言葉にできない感覚を含めて体に蓄積され続けている。
そうして数百を超える日本のサウナを見つめ続けてきた彼らが「良いサウナって何だろう」とディスカッションを重ねて得た答えの一つが「クラフト」だった。

ホームセンターで買った素材でドアや棚を自ら造作する。照明や食器、インテリアの一つ一つを丁寧に選定する。
そうした労力って、言うより決して簡単ではない。
母屋がどこか安心するのは、築年数がもたらすだけじゃなくて、随所に「サウコレ!」オーナーの息遣いが感じられるからなのかもしれない。
サウナを体験する前からすでに「ほぅ……」とため息がでちゃう満たされ感があるのですがね、「JIKON SAUNA」はサウナも水風呂も外気浴も、また語りがいがあるんです。

スタッフの皆さんで手植えされた若苔が広がるお庭を抜け、サウナがある蔵へと向かう。
クラフトにこだわる彼らが選んだとっておきのサウナは、世界的にも数が少ない、土でできた「アースバッグサウナ」だ。

土を使うアースバッグ工法で作られたサウナは、全体的に丸みのあるシルエットで見た目からも温かみが感じられる。
ごろんと横になって蓄熱された熱をじんわり感じているうちに、あ、さつま芋だ、と思う。焚き火にポイと放り込まれたさつま芋って、きっとこういう気持ち。
身体の奥の奥から温まり、その熱源はポンプのようにして手や足の先へとじわじわ送りこまれていくのだけれど、そこには幸せホルモンもたっぷり含まれている。
なんせ多幸感がすごいのです。
この黒とグレーの珪藻土の下には木枠があり、断熱材が敷き詰められている。完成までにはそれはたくさんの人がこの天井を触れたのだろう。あぁ、この斑模様を改めて美しいなぁと感じる。
意識がとろんとしてきたところで、そろそろ水風呂へ。

敷地に元から存在していた井戸を改修し、地下水を汲みあげてつくられた水風呂は、4月頭の時点では14度くらいかな、しっかり温まった身体にちょうど良い冷たさ。
いい塩梅で腰掛けられる岩で休まり、その心地よい水質を愉しむ。
身体をグーっと伸ばして対向の岩に足をかけてもいいよね。
さらにすごいのが休憩スペース。全部でなんと4箇所もある。
サウナがある蔵の2階、リクライニングチェア、縁側、そして…
ブレインスリープ社のマットレスベッド川床だ。これが「JIKON SAUNA」ならではすぎまして、全サウナ好きにお届けしたい気持ち良さなのです。

京都・貴船の川床を意識して作られたこちら、春には桜の花枝に全身をふぁさぁ…と包まれながら休憩ができます…!横になれば空から桜が降ってくる、寝転び花見ができてこれまた幸なのだけれど、写真のように身体を起こして休まるのもこれまた気持ち良いのです。
ポイントは背中から空へと吹きぬけていく風。
それってリクライニングチェアだと意外と感じられない。背中をひんやりとさする風がこんなにも気持ちいいんか……!と自分でも驚くほどに些細なところに意識が向く。
こうした「今に集中する」いや、集中できる環境にこだわっているのも「JIKON SAUNA」ならではなのです。

中学3年生から「禅」が趣味、はじめて買った写真集は京都の枯山水という激渋キッズだったカンちゃんは「サウナで整った時の感覚が坐禅と似ている」と気づき、サウナにハマったという。
そもそも、カンちゃんも元はサラリーマン。
毎日、朝早くから夜遅くまで働いていた。仕事のプレッシャーから、休日でも常にタスクを考えてしまうほどだったと言う。
でも、サウナに入った時は今、その瞬間にだけ集中できた。
カンちゃんが考えるサウナの1番の価値。
それは禅語の「而今(じこん)」の教えを誰でも気軽に体験でき、忘れたい過去や不安な未来から切り離され、今だけに目を向けられることにあるのだ。
カンちゃん、サウナ好きの皆が頷く感覚をここまで言語化してくれてありがとう。
「JIKON SAUNA」に咲いていた桜は、まだ蕾の数も少なく、小さい。
でもこれから年々迫力が増して、美しい花を次々と咲かせていくのだろう。
「いつか、47都道府県すべてに『JIKON SAUNA』を作りたい」。
「サウコレ!」メンバーが掲げる壮大な夢の種が少しずつ広がって、やがて大きな実を結ぶように。
◾️「JIKON SAUNA TOKYO」
住所:東京都青梅市駒木町2丁目387
https://jikonsauna.com/
予約はこちらからhttps://www.chillnn.com/19421d16b1b216/plan#hotelMenu
◾️日本最大級サウナインスタメディア「サウコレ!」
https://www.instagram.com/saunacollection/