vol.16 “いつかまた、どこかのサウナで”
10 Photosサウナライターとして活動する川邊実穂がお届けする連載「サウナで、わたしはわたしになる」。16回目は“いつかまた、どこかのサウナで”です。
vol.16 “いつかまた、どこかのサウナで”
10 Photosサウナライターとして活動する川邊実穂がお届けする連載「サウナで、わたしはわたしになる」。16回目は“いつかまた、どこかのサウナで”です。
2024年の夏、「エッセイの連載をしてみませんか?」と言われた時の胸の高鳴りと、椿屋珈琲で提供されたアイスコーヒーのほろ苦さは、きっと、ずっと覚えてる。
連載!
それは私の夢の一つだった。
サウナの面白さをどんな切り口で伝えていこうかと、考えながら心底ワクワクした。
連載。
ただそれは私のお腹に小さな石ができたようで、意識の片隅にあり続ける存在にもなった。
何を書こうか。こんなことを書いて面白いんだろうか。みんな、楽しんでくれるかな。
大いなる喜びと、そこはかとない不安は筆にも伝わり、当初はカチカチに力が入った状態で始まったように思う。まあ随分と口調も畏まっちゃって、スーツを着てても「あの子、新入社員なんだな〜」っていうのがわかるくらいの初々しさで。
そうして恐る恐る書き進めていたが、次第に日刊ゲンダイさんの懐の深さも見えてきた。かなり、いや、とにかく自由に書かせてもらえたのだ。
すると「あ、もっと遊んじゃえ」と私の中の悪ガキがひょっこり顔を出し、毎回の執筆が楽しくなってきた。
月に一本、丁寧に紡いでいくエッセイは、サウナがもたらす彩りある世界をくっきりと浮かび上がらせてくれた。毎月何かしら、「これは」と心動く話題があったのだ。
「サウナ×スナック」という面白すぎる掛け算サウナ(サウナスナック「かなこ」)に忘年会で訪れたり、茨城県の「常総ONSEN&SAUNA お湯むすび」では、本屋さんと絡めたイベントに参加させていただいたり。
「JIKON SAUNA TOKYO」の製作ボランティアに参加させていただき、実際に完成した施設に訪れた際は、当初と見違えるほどの出来栄えに「すごいすごい!!」と興奮を隠せなかった。
そして、かねてからの夢だった、サウナ発祥の地・フィンランドにも訪れることができた。
「最新」とか「話題の」という枕詞や王道にとどまる必要は、ない。
サウナはただ、自分にとっての「心地よい」を探し続ける軌跡として、側にいてくれた。
そのチャプターは私らしいペースで、次のステージへと進んでいく。
フィンランドに行ったことで、私は日本のサウナを外の目線から捉えられるようになった。
日本の自然が織りなす美しく豊潤な水、そしてその水が叶える「ととのう」というディープリラックスがいかに唯一無二かということ。そんな日本のサウナの魅力を海外の人にも知って欲しいと思ったのだ。
そうして胸に灯された炎の分だけ、無理せず行動に移していく。
まずは英語力を磨きたいと登録したペンパルサービス「Language Exchange」で、シカゴ在住のJさんと繋がれた。
「Jさんが来日するタイミングでサウナをご一緒したい!」と伝えると、なんとご快諾いただけたのだ。
私が考えていたことをまずは体験いただく機会を得られた。
「日本のサウナの魅力を海外の人に広めたい」
Instagramで投稿した想いに賛同してくれたのがリナちゃんだ。Jさんのために、一緒にサウナガイドのリーフレットを作ろうと意気込んだ。
そして肝心なサウナは、私の友人・シバちゃんがマーケティングを担当する「サウナランド浅草」を抑えさせてもらった。立地も抜群ながら薪サウナが体験できることもあり、海外の方もきっと喜んでくれるだろうと確信したのだ。
さらにさらに、せっかくなら他の外国人にも来て欲しいということで思い出したのが、在日フィンランド人のお友達(連載vol.13「教えて!フィンランドのサウナの楽しみ方」で話を聞いたお2人です)。
「サウナランドいいですね!」とリプライをもらい、晴れて日本とフィンランド、そしてアメリカという三国サウナ交流会が開催されることになったのでした。
ドキドキしながら当日を迎えたが、サウナに入ってしまえばいつも通り、いや、いつも以上に楽しくゆるやかな時間が過ぎていた。
「Jさんに手取り足取り、サウナの魅力を伝えねば!」と肩に力が入っていたのだが、Jさんはご自身のペースでサウナを堪能され、クールダウンのために水風呂もしっかり入っていた。
お風呂↔︎水風呂の温冷交代浴も私が伝える前に実践していて、小雨がちらつく軒下で椅子に身を委ね、とろんとした表情で休憩されるJさん。そして、こう言ってくれた。
「なんて言うんだろう、この感じ…
いい日本語がわからないけれど、でも、とにかく気持ちいいよ」
サウナの心地よさは、やっぱり世界共通なんだ……。
勇気を出してJさんに声をかけ、今日の会を開催して本当に良かったと、私は胸がじんわり熱くなった。
サウナの魅力を伝える方法は、沢山ある。
今回のようなサウナ施設でのアテンドもそうだし、エッセイを書くこともそうだ。
そうした活動が不思議と広がり、最近はYouTube番組やPodcastにも参加をさせてもらっている。
私自身が「うお〜〜楽しい〜〜!」と思える行動を積み重ねた先に、今後どんな人やサウナと巡り合えるのか。そんな未来が愛おしく、今からとても楽しみだ。
だけど私は急がない。
「自分らしいペースで進むことが何よりも大切だよ」と教えてくれたのが、サウナだから。
私が考えていることを自由な表現の場として与えてくださったことへ、心からの感謝を込めて。
お付き合いいただいた読者の皆さまも、本当にありがとうございました。
今度お会いするときには、貴方がどのようにサウナを楽しんでいるのか、ぜひ貴方の言葉で教えてください。
いつかまた、どこかのサウナで。
◾️1枚目
…大垣書店 麻布台ヒルズ店のイベントにて。麻帆ちゃんの写真はいつも繊細で、幸せのシーンの切り取り方に愛があってグッとくる。ありがとう。
撮影:佐々木 麻帆
◾️2枚目
…大好きなサウナ、福岡県の「SAUNA SAKURADO」のイベントで水をバシャッ。
撮影:安東 佳介
https://sauna-sakurado.spa/
◾️3枚目
…長野県「The Sauna」のイメージムービーを撮影した時のクルーのみんな。年代も近く、初めて会った時から「なんだかもう大好き〜!」なお友達になれた。またみんなに会いたい。
https://lampinc.co.jp/nojiriko/sauna/
◾️4枚目
…静岡鉄道の引退したバスを改装して誕生した「サバス 3号」。お茶の段々畑をイメージしたベンチはゴロンと横になれて最高!
https://sauna-ikitai.com/news/sabus3
◾️5枚目、6枚目、7枚目
…「サウナランド浅草」は2025年10月下旬に大幅リニューアルオープン予定。サウナ室の完璧な湿度と薪のとろ火感はぜひ体験してほしい。
https://saunaland-asakusa.jp/
◾️5枚目、6枚目、7枚目
…「サウナランド浅草」は2025年10月下旬に大幅リニューアルオープン予定。サウナ室の完璧な湿度と薪のとろ火感はぜひ体験してほしい。
https://saunaland-asakusa.jp/
◾️9枚目
…11月5日に配信が始まる「となりのカワちゃんのしらんけどラジオ」の制作チーム。
最高ポジティブアベンジャーズ。収録前にドサーっと並んだおにぎりやサンドイッチの青春感は、涙が出そうな幸福み。
まるでスタジオのような雰囲気ですが、こちらはなんと西荻窪「ROOFTOP」の会議室。サウナとワークスペースだけでも素晴らしいのに、「会議室の音の響きも良い!」ってどれだけすごいのよ。
これからいろんなイベントも仕掛けていきたいと思うので、乞うご期待です。
Podcast登録 https://open.spotify.com/show/3M8l8vg55SaBo2R3UaC4VN
◾️10枚目
…大分県豊後大野市で開催された「サウナ万博2025」にて、稲積水中鍾乳洞サウナのオーナーかつ私の九州のお父さん・青松さんと、「SAUNA SAKURADO」のマネージャー・ネイチャーさんとパチリ。
九州のハーブを鼻から皮膚からいっぱい吸い込み、エメラルドグリーンに輝く川に飛び込んで浄化される。なんともピースフルで心が満たされるイベントだった。
青松さん、ネイチャーさん、いつも楽しい時間をありがとうございます!
稲積水中鍾乳洞サウナ https://inazumi.com/sauna/









