vol.45「諦めたらそこで試合終了」
12 Photos女優・カメラマンとして活動する彩雪が、日常で見つけたドキドキを写真を通してお届けする連載、45回目は「諦めたらそこで試合終了」です。
vol.45「諦めたらそこで試合終了」
12 Photos女優・カメラマンとして活動する彩雪が、日常で見つけたドキドキを写真を通してお届けする連載、45回目は「諦めたらそこで試合終了」です。
「感情をちゃんと言葉にしなくちゃ」って思うんだけど、あんまりにも不器用で、そもそも感情なんてどれも言葉で表そうとすると曖昧なものだから、上手く整理できなかった。
写真という形に残すほうがわたしには簡単だった。自分の好きなように写真で表現するのは簡単だったけれど、それに対する他人からの評価を気にしないのは難しかった。アイデンティティーを持つことは思っている以上に難しいと思う。
最近『周りが自分のことをどう思うかなんて関係ない、自分が自分のことをどう思うかだけが大事』というニュアンスの言葉に、偶然にも何度も出会った。
確かに、お金持ちだから幸せだとは限らないし、仕事が成功してるから幸せだとは限らない。
どんな状況でも自分が幸せだと感じていたら幸せ。当たり前だけどうっかりしていると他人と比べてしまう。他人からの評価ばかりを気にしてしまう。
だからこそ自分を信じるべきだと。
自分の中でこの軸がブレているということを誰かが知らせてくれているようだった。
本当に、人生、必要なタイミングで必要なものに出会う。
撮る写真も、そこがブレると写真がブレる。
自分の撮る写真が好きじゃない、つまらない、色気がない、見たくない・・・消去。
わたしにもそんな時期があった。その先に何か目標があってそのためにそれをやるのとはわけが違う。
撮る写真というのはものすごく人間性を表すということを実感していたからこそつらかった。
この状況を打破したのは友人との旅行で、ただ思い出を残すためだけに撮った写真が大好きだった。写真が楽しいと思えた瞬間だった。その日からまた上手く歯車が動き出したように思う。
前回のコラムで紹介したソール・ライターは自分が美しいと思うものを突き通した。地位も名誉も捨てて。自分が撮りたいものがブレなかったからだろう。
自分に嘘をつかない姿がカッコ良い。
人間、自分に嘘をつきたくないから言い訳というものが生まれる。
お金とか環境とか自分以外のせいにする。でもその事態を招いているのでさえも自分だ。
すべてのことは少なからず自分のせいでも自分のおかげでもある。
それも肝に銘じておきたい。
わたしは演じることも、服を魅せることも、自分が撮ることも、言葉を紡ぐことも、どれも好きだ。
好きなこともひとつに絞らないといけないというそんな法律はない。だから一生涯でやりたいことは惜しみなくやりたい。
時間が27時間あったらどうするかという質問がたまにあるが、わたしは即答でこれらに費やす時間を増やすと答える。
それくらい好きなことで、それに責任を伴ったものが今のわたしの仕事だ。
わたしの外国人の友達が、『なんで日本はニュースにも名前の横に(〇〇歳)って書いてあるの?何か関係あるの?』と言っていた。雑誌にも”〇〇代のファッション”などという見出しがよく見られる。
確かに、何かしらの指標にはしやすいのだが年齢を気にしすぎるのはナンセンスだと感じるようになった。
何歳になってもそういうスタンスで生きていたい。年齢というのは顔に書いてあるわけでもないし言わなければわからない。そもそも年齢なんていうのはただの数字であって、精神年齢もはたまた身体年齢もどのようにして過ごしてきたかで全然変わってくることは明らかだ。
死というものが直前になったときに、年齢を理由に諦めたことで後悔しないようにしたい。
それにしても『諦めたらそこで試合終了』ってシンプルに良い言葉だな。
撮影・文 彩雪